「熱中症対策には水を飲めば十分」という考え方には注意が必要です。
水は重要な水分補給源ですが、大量に汗をかいた場合には、体内から水分だけでなくナトリウムも失われます。その状態で水だけを大量に摂取すると、血液中のナトリウム濃度が低下し、低ナトリウム血症につながる危険があります。
汗をかくとナトリウムも失われる汗の主成分は水ですが、ナトリウムなどの電解質も含まれています。
長時間の運動や屋外作業で大量に発汗すると、次のような状態になります。
1. 汗と一緒に体内の水分が失われる。
2. ナトリウムなどの電解質も失われる。
3. 水だけを大量に補給すると、体液中のナトリウム濃度が低下する。
4. 水分と電解質のバランスが崩れ、体調悪化につながる可能性がある。
厚生労働省の熱中症対策資料でも、大量発汗後は水分と塩分を同時に補給するよう呼びかけています。塩あめだけを摂取して水分を補わない方法も適切ではありません。
水だけでよい場合と塩分補給が必要な場合ここで誤解したくないのは、水だけの水分補給が間違いというわけではないことです。
冷房の効いた室内で過ごしているときや、短時間の軽い外出などでは、水や麦茶を飲み、通常の食事をきちんと摂ることで対応できる場合があります。
一方、次のような状況では塩分補給も検討してください。
- 炎天下で長時間運動した。
- 屋外で長時間作業した。
- 大量の汗をかき、衣服がびっしょり濡れた。
- 繰り返し汗をかくスポーツを行った。
- 食事を十分に摂れないまま暑い環境で活動した。
ただし、塩分を多く摂れば熱中症を防げるわけではありません。日本人は通常の食事からも塩分を摂取しているため、必要以上に塩分を追加しないことも大切です。
【麦茶・カフェイン・手作り】熱中症予防ドリンクの正しい知識
麦茶は、夏場の普段の水分補給に取り入れやすい飲み物です。
大きな特徴は、カフェインを含まないこと。子どもから高齢者まで幅広い年代が飲みやすく、甘味料を加えていない麦茶なら糖分を気にせず水分補給できます。
ただし、麦茶を飲むだけで熱中症を防げるわけではありません。
麦茶には水分補給の役割がありますが、大量に汗をかいたときに必要な塩分を十分に補える飲料ではありません。発汗量が多い場合は、食事や適切な飲料から塩分を補いましょう。
厚生労働省の資料では、手作りの熱中症予防ドリンクについて、水の代わりに麦茶を使用する方法も紹介されています。
カフェイン入りのお茶やコーヒーは避けるべき?緑茶、紅茶、ウーロン茶、コーヒーにはカフェインが含まれています。
カフェインには利尿作用がありますが、通常量のカフェイン飲料を飲んだだけで、必ず脱水になるわけではありません。
2023年に公表された研究では、軽度の脱水状態にある人を対象に、緑茶、水、カフェイン水の水分保持への影響が比較されました。緑茶を飲んだ場合も、水分バランスの回復に役立つことが示されています。2024年の研究レビューでも、普段の適度なカフェイン摂取による水分バランスへの影響は小さいと整理されています。
ただし、次の点には注意が必要です。
- カフェインを大量に含むエナジードリンクを飲み過ぎない。
- コーヒーや濃いお茶だけで大量発汗時の水分補給を済ませない。
- 利尿作用や刺激への反応には個人差がある。
- 動悸、不眠、胃腸の不調などがある場合は摂取量を見直す。
農林水産省も2026年8月の更新情報で、カフェインの過剰摂取による健康への影響について注意を促しています。
自宅で作れる熱中症予防ドリンクのレシピ市販のスポーツドリンクを常備するのが難しい場合は、手作りの飲料も選択肢になります。
厚生労働省の「働く人の今すぐ使える熱中症ガイド」には、次のレシピが掲載されています。
手作り熱中症予防ドリンク
水または麦茶
1,000mL
砂糖
大さじ4と1/2
食塩
小さじ1/2
レモン
少々
作り方
1. 清潔な容器に水または麦茶を入れる。
2. 砂糖と食塩を加える。
3. よく混ぜて溶かす。
4. 好みに応じてレモンを加える。
出典:厚生労働省「働く人の今すぐ使える熱中症ガイド」。糖分を控えたい場合は、砂糖の量を調整するか甘味料を使用する方法も紹介されています。
このレシピは熱中症予防用の水分・塩分補給飲料です。医療用の経口補水液と同じものではありません。脱水症状がある場合の治療用飲料として代用しないでください。
また、糖尿病や腎臓病などで糖分・塩分の制限がある人は、使用前に主治医に相談しましょう。
【経口補水液はいつ飲む?】スポーツドリンクとの違いと注意点
経口補水液は、熱中症対策の飲料として名前を聞く機会が増えています。しかし、スポーツドリンクと同じ感覚で飲むことはおすすめできません。
経口補水液は脱水状態に応じて使う飲み物経口補水液は、水分、ナトリウム、カリウム、ブドウ糖などを一定の割合で配合した飲料です。
一般的なスポーツドリンクと比較すると、電解質の濃度が高く、脱水時の水分吸収を考慮した組成になっています。
消費者庁の資料では、経口補水液は一般的なスポーツドリンクに比べ、ナトリウムやカリウムが約3~4倍多く含まれると説明されています。
経口補水液を飲むタイミング経口補水液を使用する際には、次の点を確認してください。
- 下痢や嘔吐に伴う脱水がある場合。
- 熱中症による脱水状態に適した製品である場合。
- 医師、薬剤師、管理栄養士などから使用を勧められた場合。
- 製品に記載された使用対象や摂取方法に該当する場合。
特に注意したいのが、すべての経口補水液が同じ用途ではないことです。
2026年7月16日の消費者庁長官記者会見では、感染性胃腸炎による下痢・嘔吐に伴う脱水に適した製品と、熱中症による脱水状態に適した製品があることが説明されました。
熱中症対策として購入するときは、パッケージの使用目的を確認する必要があります。
経口補水液を日常的に飲んではいけない理由経口補水液は、普段の水分補給を目的にした飲み物ではありません。
消費者庁は、脱水状態ではない健康な人が日常的に飲んだり、大量に飲んだりすることについて、血圧や心臓への負荷を懸念しています。
特に注意したいのは次の人です。
- 高血圧で塩分摂取を制限されている人
- 腎臓病がある人
- 心臓病がある人
- カリウムや糖質の摂取制限を受けている人
また、経口補水液を一度に大量に飲むと、ナトリウムの過剰摂取につながる可能性もあります。必要性や適切な飲み方について、医師や薬剤師に相談してください。
熱中症の症状がある場合は飲み物だけに頼らないめまい、立ちくらみ、頭痛、吐き気、筋肉のけいれん、大量の発汗などがある場合は、熱中症を疑う必要があります。
まず涼しい場所に移動し、衣服を緩め、首の周囲や脇の下、足の付け根などを冷やしてください。
意識がはっきりしていて、自力で飲める場合は、状況に応じて水分・塩分を補給します。
一方、自力で水分を飲めない、意識がもうろうとしている、呼びかけへの反応がおかしい場合は、無理に飲ませず、直ちに119番してください。
熱中症は、飲み物を飲んで休むだけでは対応できない重症例もあります。
【高齢者の熱中症予防】飲み物選びで気をつけたいポイント
高齢者の熱中症対策では、飲み物の種類だけでなく、飲む習慣を作ることが重要です。
厚生労働省によると、熱中症患者のおよそ半数は65歳以上です。高齢になると暑さや水分不足を感じる感覚が低下し、体温調節機能も弱くなるため、室内にいても注意が必要です。
高齢者におすすめの飲み物基本的には、水や麦茶を中心に考えます。
水
日常的な水分補給の基本。飲みやすい温度で用意します。
麦茶
カフェインを含最初に、日常的に取り入れやすい飲料です。
スポーツドリンク
汗を多くかいた場合に選択肢になります。糖質や塩分の量を確認します。
経口補水液
脱水状態に適した製品を、必要性や医療専門家の助言に応じて使用します。
高齢者本人が水分不足に気づかないこともあるため、家族や介護者による声かけが役立ちます。
具体的には、次のような工夫があります。
- 起床時に飲み物を用意する。
- 食事のたびに水や麦茶を勧める。
- 午前・午後の休憩時間に水分補給を促す。
- 入浴前後に飲み物を準備する。
- 手の届く場所に飲み物を置く。
- 飲んだ量や尿の状態、体調の変化を確認する。
政府広報オンラインが2026年7月に紹介した水分補給の目安は、飲料として1日約1.2L、コップ約6杯分です。ただし、必要量には個人差があり、食事から摂取する水分や活動量も関係します。心臓病や腎臓病などで水分制限を受けている場合は、この数字を一律に適用せず、主治医の指示を優先してください。
高齢者は飲み物と室温管理をセットで考える水分補給だけで熱中症を完全に防げるわけではありません。
特に高齢者は、暑さを感じにくくなっていることがあります。冷房を適切に使用し、室温を確認することが大切です。
政府広報オンラインも、熱中症対策として水分補給と合わせた暑さ対策、周囲の人による見守りを呼びかけています。
【熱中症予防の飲み物】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:熱中症予防には水と麦茶のどちらがおすすめですか?
水も麦茶も普段の水分補給に適しています。麦茶はカフェインを含まない点が特徴です。ただし、大量に汗をかいた場合は、どちらを飲んでも塩分補給が別途必要になります。
Q2:熱中症対策にスポーツドリンクを毎日飲んでも大丈夫ですか?
健康な人が必ずしも毎日飲む必要はありません。スポーツドリンクには糖質やナトリウムが含まれるため、日常生活では水や麦茶を基本にし、発汗量に応じて使い分けましょう。
Q3:経口補水液は熱中症予防のために毎日飲むべきですか?
いいえ。経口補水液は日常的な水分補給用ではありません。脱水状態に適した製品を、表示や専門家の指示に従って使用してください。
Q4:麦茶だけで大量に汗をかいたときの水分補給は十分ですか?
大量発汗時には麦茶だけでは塩分補給が不足する可能性があります。スポーツドリンクや食事などを活用し、水分と塩分を補いましょう。
Q5:熱中症予防の飲み物は冷たいほうがよいですか?
冷たい飲み物は飲みやすく、体を冷やす助けにもなります。無理なく飲める温度を選び、飲料の温度だけでなく、十分な水分補給と休憩を心がけましょう。
Q6:高齢者にはどの飲み物が一番おすすめですか?
普段は水や麦茶が取り入れやすい選択肢です。大量発汗時は塩分補給も考えます。心臓病や腎臓病などがある場合は、飲み物の種類や摂取量について主治医に確認してください。
熱中症予防で大切なのは、飲み物の種類を一つに決めることではなく、その日の気温、活動量、発汗量、体調に合わせて選ぶことです。
普段の水分補給には水や麦茶、大量に汗をかく運動や屋外作業にはナトリウムを含むスポーツドリンク、脱水状態には適応する経口補水液という使い分けが基本になります。
2026年の厚生労働省と消費者庁の情報からも、定期的な水分・塩分補給と経口補水液の適正使用が要点です。
最後に、覚えておきたい判断基準を整理します。
- 普段の生活: 水・麦茶をこまめに飲む。
- 大量に汗をかく日: 水分と塩分を同時に補う。
- スポーツドリンク: ナトリウムと糖質の表示を確認する。
- 経口補水液: 脱水状態に適した製品を適切に使用する。
- 高齢者: のどの渇きを待たず、定期的な水分補給を習慣化する。
- 熱中症の疑い: 水分補給だけに頼らず、冷却や医療機関への対応を優先する。
熱中症は屋外だけでなく、自宅で過ごしているときにも発症します。飲み物を手元に用意し、暑さを避け、休憩を取りながら体調を管理することが、日々の熱中症予防につながります。