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【医学的検証】自然なショートスリーパーは遺伝性?訓練でなれるのか

棗 快 棗 快 • 更新: • 公開: • 読了約 11 分
目次

堀大輔氏の事例を考えるうえで、最も重要なのが「生まれつき睡眠時間が短い人」と「睡眠不足に慣れてしまった人」の違いだ。

医学研究では、実際に自然な短時間睡眠を示す人が存在することが確認されている。ただし、その体質は一般的な睡眠不足とは異なる特徴を持つ。

自然なショートスリーパーには遺伝的な特徴がある

医学研究で知られる概念に、Familial Natural Short Sleep(家族性自然短時間睡眠、FNSS)がある。

これは、一般的な人よりも大幅に短い睡眠時間で生活しながら、健康上の問題や日中の機能低下が目立たない体質を指す。生涯にわたって短時間睡眠の傾向が続く点も特徴だ。

2026年に発表された睡眠・概日リズムの遺伝学に関するレビューでは、自然な短時間睡眠に関係する遺伝子として、次のものが紹介されている。

- DEC2(BHLHE41): 睡眠時間の調節に関係する遺伝子。
- ADRB1: β1アドレナリン受容体に関係する遺伝子。
- NPSR1: 神経ペプチドS受容体に関係する遺伝子。
- GRM1: グルタミン酸受容体に関係する遺伝子。
- SIK3: 近年の研究で自然な短時間睡眠との関連が報告された遺伝子。

これらは、誰でも持っている一般的な睡眠改善能力を示すものではない。特定の遺伝子変異と睡眠時間の関係が研究されているという意味だ。

また、遺伝子だけで睡眠時間が決まるわけでもない。睡眠には年齢、生活習慣、健康状態、環境、概日リズムなど複数の要因が関係している。

したがって、堀氏が独自のトレーニングによって短時間睡眠を実現したと説明していても、それだけで自然なショートスリーパーと同じ遺伝的・生理的特徴を獲得したことにはならない。

ショートスリーパーは訓練で誰でもなれるのか

現時点で、一般の人が睡眠時間を段階的に削る訓練によって、遺伝的な自然短時間睡眠の体質を獲得できるとする確立した医学的根拠はない。

睡眠習慣の改善によって、寝つきや睡眠の質、生活リズムが改善することはある。しかし、必要な睡眠時間そのものを30分まで減らしても健康を維持できるという話とは別だ。

特に注意したいのは、睡眠不足が続くと、自分では眠気や疲労に慣れたと感じても、集中力や判断力が低下している場合があることだ。眠気を自覚しにくくなったことを、睡眠が不要になった証拠と考えてはいけない。

成人は何時間眠るべき?7時間以上という基準の意味

睡眠時間の目安については、厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」と、米国睡眠医学会などの専門家による推奨を参考にできる。

厚生労働省は、成人について個人差を踏まえながら6時間以上を目安に必要な睡眠時間を確保するよう推奨している。また、成人の適正な睡眠時間はおおむね6~8時間と説明している。

一方、米国睡眠医学会(AASM)と睡眠研究学会(SRS)の共同声明では、健康な成人は定期的に7時間以上眠ることが推奨されている。7時間未満の睡眠が続く場合、肥満、糖尿病、高血圧、心血管疾患、うつ病などの健康リスクとの関連が指摘されている。

つまり、7時間という数字はすべての人に一律に適用する絶対的な境界線ではないものの、健康な成人が睡眠時間を確保する際の重要な目安となる。

厚生労働省も、睡眠時間が6時間未満になると、生活習慣病や死亡リスクなどとの関連が認められる研究を紹介している。日本人男性労働者を対象にした追跡研究なども掲載されており、極端な短時間睡眠を一般化することには慎重さが必要だ。


睡眠時間を考えるときの医学的な目安

厚生労働省の成人向け目安
6時間以上


米国の専門学会の推奨
7時間以上


堀氏が公言してきた睡眠時間
約30分

それぞれ推奨基準と本人の自己申告であり、同じ種類の数値ではない。

30分睡眠を一般的な健康法として取り入れることは、医学的な推奨から大きく外れる。堀氏の生活をそのまま模倣することは勧められない。

【見分け方】睡眠不足と本物のショートスリーパーは何が違う?

ショートスリーパー堀大輔

短時間しか眠っていない人が、全員ショートスリーパーというわけではない。実際には、睡眠不足を抱えているにもかかわらず、自分では問題がないと思っているケースも考えられる。

見分ける際には、睡眠時間の数字だけでなく、日中の状態や休日の睡眠、長期的な生活パターンを確認することが大切だ。

自然なショートスリーパーに見られる特徴

- 子どものころから一貫して睡眠時間が短い。
- 短時間の睡眠でも自然に目が覚める。
- 日中に強い眠気や居眠りが生じない。
- 集中力や判断力が普段どおり保たれている。
- 休日に長時間眠って睡眠不足を補う必要がない。
- 短時間睡眠によって生活や健康に支障が生じていない。

ただし、これらは判断の参考になる特徴であり、自己判断だけで遺伝的な自然短時間睡眠と診断できるわけではない。

睡眠不足が疑われるサイン

- 朝、目覚まし時計がなければ起きられない。
- 日中に強い眠気を感じる。
- 会議や移動中に意図せず眠ってしまう。
- 休日になると平日より長く眠る。
- 集中力や記憶力が低下している。
- イライラしやすく、気分が安定しない。
- カフェインなどで眠気を抑え続けている。

特に、運転中や仕事中に眠気で意識が途切れる場合は、安全上の問題がある。無理に起き続けるのではなく、運転を中止するなどの対応が必要になる。

自分の睡眠状態を確認する方法

睡眠不足かどうかを調べるには、まず数週間程度、就寝時刻、起床時刻、途中で目覚めた回数、昼寝、日中の眠気などを記録するとよい。

スマートウォッチや活動量計は生活パターンを把握する補助にはなるが、睡眠段階や睡眠時間を医学的に確定する検査ではない。

強い眠気や不眠が続く場合は、睡眠外来や医療機関で相談することが望ましい。必要に応じて睡眠ポリグラフ検査などによって、睡眠障害の有無を調べることもできる。

大切なのは、睡眠時間を減らせたかではなく、十分に休めているか、日中に健康的な活動ができているかという視点だ。

【よくある質問】ショートスリーパー堀大輔に関するFAQ

Q1:堀大輔は本当に1日30分しか寝ていないのですか?

A1:本人は約17年間、1日30分睡眠を続けてきたと公言しています。ただし、2026年9月の169時間ライブ配信についても、本人は睡眠時間を証明する目的ではなかったと説明しています。独立した医学的検査によって17年間の30分睡眠が証明されたとは確認できません。2026年11月現在、本人は具体的な睡眠時間を公表しない方針です。

Q2:Nature sleepを受講すれば誰でもショートスリーパーになれますか?

A2:誰でも遺伝的な自然短時間睡眠の体質になれるという医学的根拠はありません。Nature sleepは睡眠記録や生活習慣の管理、講義、相談などを組み合わせた堀氏独自のプログラムでした。生活習慣の改善と、必要な睡眠時間そのものを減らすことは区別する必要があります。

Q3:日本ショートスリーパー育成協会は現在も活動していますか?

A3:一般社団法人日本ショートスリーパー育成協会は2026年9月30日付で解散し、10月26日付の官報に公告が掲載されました。10月24日にはプログラムの新規募集終了も告知され、11月2日には堀氏が睡眠事業からの撤退を発表しています。法人の清算手続きと過去の契約関係については、別途確認が必要です。

Q4:堀大輔の現在の活動は何ですか?

A4:2026年11月現在はYouTubeを中心に活動しています。日常のライブ配信や筋力トレーニング、他の発信者とのコラボレーションなどが主な内容です。本人は1年間でチャンネル登録者100万人を目指す意向を示しています。

Q5:『できる人は超短眠!』はどのような本ですか?

A5:2016年にフォレスト出版から刊行された堀大輔氏の著書です。自身の短時間睡眠の経験やNature sleepの考え方を紹介した書籍で、一般的な睡眠医学の標準的な教科書とは異なります。健康のために睡眠を削ることを推奨する医学的根拠として読むべきものではありません。

堀大輔氏は、1日30分睡眠を17年間続けてきたと公言し、Nature sleepという独自の睡眠改善プログラムを展開してきた人物だ。『できる人は超短眠!』の出版や日本ショートスリーパー育成協会の運営を通じて、短時間睡眠というテーマを広く発信してきた。

しかし、2026年は大きな転換点となった。9月の169時間ライブ配信、睡眠プログラムを巡る批判や報道、9月30日の協会解散、10月の新規募集終了を経て、11月2日に睡眠事業からの撤退を発表した。

今回の動向から読み取れる要点は、次の3つだ。

第一に、堀氏の30分睡眠は本人の長年の主張であり、独立した医学的検証によって安全性まで確立された事実ではない。ライブ配信や本人の説明だけで、極端な短時間睡眠の健康上の安全性を判断することはできない。

第二に、自然なショートスリーパーは実在するが、一般の人が訓練で同じ体質になれるという証拠はない。遺伝的な特徴を持つ人の存在と、睡眠不足を続けても健康でいられるという考え方は、まったく異なる。

第三に、睡眠改善の目的は睡眠時間を競うことではない。睡眠の質や生活リズムを整え、日中の集中力や心身の健康を保つことが本来の目的になる。

堀氏の今後は、睡眠指導者としての活動からYouTube発信者としての活動へ移っていく。新たな挑戦がどのような評価を受けるのかも注目される。

ただし、堀氏の生き方に興味を持つことと、30分睡眠を自分で実践することは別問題だ。睡眠時間を無理に削るのではなく、自分に必要な睡眠を確保すること。それが、健康を損なわずに仕事や生活の質を高めるための、最も現実的な判断基準となる。

最終的な結論は明快だ。堀大輔氏の30分睡眠という主張は興味深い個人事例ではあるが、一般の人が目指すべき健康法として医学的に確立されているわけではない。 自然な短眠と睡眠不足を混同せず、科学的な知見を基準に判断することが重要だ。

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コンテンツディレクター 棗 快
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